「すごくいいストーリーだなと思いましたね。あらすじもちょうどいいボリュームですし、観る人がついていけるゆったりした空気感や時間軸だな、と」 彼が演じるのは、病に冒され、残り少ない余命を静かに受け入れつつ、ヒロインと出会い、人知れず心を揺らす主人公の寿俊。抑えた演技にヒロインへの愛をにじませる彼の表現力は観る者をぐっと惹きつける。

「ぐっと噛みしめたっていう感じでもなければ、自分の心情を投影して演じようともあまり思わなかったんです。というのも、台本から読みとれるムードがほんわかしていて、葛藤も少ないように思ったので、テンション的にも馴染みやすかったし、重く考えることもなかったんです」

 そう謙遜する彼は、しかし、精力的に音楽活動を行いつつ、テレビや映画と、数々の作品に出演し、着実に経験を重ねてきた。そんな彼にとって、音楽活動と俳優活動の共通点とは?

「役者とのしての僕はこれといった方法論を持ってなかったりするので、その現場の雰囲気が反映されているっていう感じなんですよ。それは音楽制作の現場にも言えることで、これと決め込まず、流れに乗って、ゆっくりそこに入っていくっていう。ただ、撮影にしても、レコーディングにしても、臨む際のスタイルはこれといってなかったりはするんですけど、逆に言えば、自分との温度差がありすぎるものは遠慮したいし、その場の雰囲気をぶち壊すことは避けたいかな。もちろん、そういうスタイルが合う人もいるんでしょうけど、流れに乗ることで、見えてくるもの、出来ることが明確になることもあったりすると思うんでね」

 流れの中に身を置き、わずかな変化を見逃さずにすくい上げ、その最良の形を音や演技で反映させるには、尋常ならざる集中力を要するはず。日本情緒が残る富山県高岡市という美しいロケ地で、静かに自らを研ぎすませる彼の姿は容易に想像出来る。

「ロケ地の富山は穴場なんですよ。歌謡サスペンス劇場の撮影でよく使われるらしいんですけど、人が少ないうえに、路面電車が走ってたり、綺麗な川や山もあって、すごく趣があるし、抜けがいい映像が撮れるっていう。今回の撮影は、ほとんど、あの近辺で撮ってます。ホントいいところですよ。まぁ、ただ、飲み屋が少ないんですけどね(笑)」

 そう言って笑う彼は今年でデビュー10周年を迎える音楽活動、そして、8年振りの映画主演と、充実した活動のただなかにあって、この作品の魅力について語ってくれた。

「ストーリー的には、1年くらいの出来事が収められた作品なんですけど、観て頂ければ、すごくゆっくりした時間の流れに入っていけると思うんです。ぱっと見の時代設定はよく分からない感じになっているんですけど、そこはかとなく漂っている懐かしさが人の心象風景とリンクするように思いますし、長崎監督の抑えた演出が利いていて、さらっと観ることも出来るんじゃないかな。そんな落ち着いた雰囲気のなかで、ほのかのエピソードを一緒に味わって頂きたいですね」

取材・文 :小野田雄 スタイリスト :宮崎まどか
撮影 :田中純一 ヘアメイク :三原結花
TOPへ


WindowsMediaPlayer 1MWindowsMediaPlayer HIGHWindowsMediaPlayer LOW
QuickTime 1MQuickTime HIGHQuickTime LOW