西島秀俊
好きだ、TOPへ戻る
西島秀俊X宮崎あおい 非日常的で現実逃避を促す映画が多い昨今、日常を限りなく自然に描写することによって観る者の共感を得る作品が届いた。『好きだ、』は、お互いに言いたいことが言えなかった青春の淡い思い出、そして成長し社会に出て直面する思い通りにならない現実を背景に描かれる、男女の17年越しの関係性を描いたドラマ。17歳の頃の主人公2人、ユウとヨースケを演じるのは宮崎あおいと瑛太。そして34歳になって再開する2人を永作博美、西島秀俊が演じている。物語では、永遠に交わらない時間軸を飛び越えて、宮崎と西島の2人が作品について語った。
 容姿もキャラクターも違う俳優達がスクリーンの中で実に自然に成長を遂げているのも見どころの一つだが、「17年後の自分を誰が演じるかさえしりませんでした。」と、17年後の自分を演じることになる永作博美を意識せずに、撮影当時17歳だった本人の感性のまま、自由にユウを演じたと語る宮崎。17年後のヨースケを演じた西島も「ヘアメイクさんやスタイリストさん、石川監督自身が回すカメラワークにより、同一人物を表現しているんだと思います。」と、宮崎あおい瑛太の話し方、物腰や仕草などを、あえてそれほど研究してない様子を語ってくれた。作為的に作り込んだようには見えず、あくまでも監督の目を通してユウとヨースケの人生そのものが描かれているのがこの作品の大きな特徴。そんな、自然な演出を象徴するかのように、劇中にはアドリブでの演技や台詞が多々登場する。それは、西島が「実はどこまでが台本でどこからが即興かよく覚えてないんですよね」と語るほど。「ワンシーンに半日かけて撮ったりしていたんで、いくらでも台詞の間に、間を取れるんです。実は、実際に使われたカット意外にも、ものすごい沢山喋っていて、その中から監督が抜粋したシーンを使っています。」この石川監督の手法に関して、宮崎は「現場に行くと監督に、台詞は忘れていいよって言われました。その場面の、キーワードを渡されて、それ以外の部分は、全て即興で会話するシーンまであったんです。相手役が何を言ってくるか解らないので、緊張感も凄かったし、本当に自然な感じの会話になったんだと思います。」
 状況を断定してしまう説明的な台詞は、一切無い。一組の男女の間に漂う自然な空気感がこの作品の最大の魅力である。
宮崎あおい
西島秀俊 また西島はこんな石川監督独特の演出方法を教えてくれた。「役者同士の挨拶もないんですよ。ユウと17年ぶりに再会するシーンで永作さんとは顔合わせすることもなく、初めて現場で会ったんです。」 この徹底的な自然演出、石川作品独特の世界観、それは役者に「自然に見える演技」を求めるのでは無く、「自然」なまま、カメラを回し続けることによって生み出されている。そして出演者たちも、役者にとって決して容易ではないこの作業を、自らが楽しみながら進行していく。
 「私はこの映画と、撮影する直前に公演していた舞台の『星の王子さま』、この2つの作品に出逢って仕事に対する考え方や役に対する向き合い方がすごく変わりました。役者が役として生きられる時間って映画や舞台の中だけで、本当に短いんです。その短い時間を幸せに感じるようになりました」と宮崎あおいは、この作品を自身のキャリアでの転機とも位置づける。「この作品では自分自身に近い女の子を演じましたが、自然にユウを演じることが出来て本当に楽しかったです。相手のヨースケにもすごくドキドキしていたし、そんな感じが観ている人にも伝わればいいなぁと思いますね。」
 一方、西島秀俊も、作品に出会えたことを幸運だったと振り返る。「石川監督やこの映画とも良い縁で出逢えたと思います。生きていて、まま成らないこととか、人に伝えられない想い、監督は心の微妙な揺れを巧みに撮らえていると思います。観た人には、みんな心の奥に響くものがきっとあるはずですよ。」
Photograph by Takeshi Hoshi / Text by Yasushi Otsuka
TOPへ戻る
PAGETOP