『タナカヒロシのすべて』鳥肌実インタビュー 日本一不器用な男のちょっとだけいい話
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鳥肌実インタビュー

鳥肌実ビデオコメント


鳥肌実 プロフィール

42歳、アジアアフリカ語大学トラヴィダ語学科卒。95年、現在の演説スタイルを確立。以降毎年全国各地で演説会を行い若者たちにカリスマ的な人気を博す。世の中のあらゆるタブーを笑いへと転化する異色の芸風とブラックユーモアの演説芸がメインだが、会社員や学校教師などの一人芝居もこなす。幅広い表現力とリアルな笑いへの追求心は評判を呼び全国のファンを掴んでいる。歴史に残るお笑いパフォーマーとして活躍している。また自社ブランドのCD、DVDはどれも10万枚以上の売上を記録し、話題となっている。主な映画出演作は『けものがれ俺らの猿と』(00)、『スペースポリス』(04)がある。



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その独特の風貌、身体中から発散されている異様なまでの殺気…。暗に社会的なメッセージを発信してもいれば、ただただ圧倒される過激なテンションをぶつけてもいる、そんなつかみどころのない演説芸でのしあがってきた鳥肌実。演劇系のファンにはおなじみだが、映画という未知なる世界で初の「大舞台」に挑んだのが、田中誠監督の「タナカヒロシのすべて」。そこには鳥肌が抱く、現代若者へのアンチテーゼも…。

まず最初に鳥肌主演で一本撮りたいんだと、映画会社の社長さんからお話をいただきまして。そこで、普段の私のキャラクターとは違う人物を演じてくれぬかと言われました。非常に普通の、淡々として、無気力な、ある意味典型的とも言える現代日本の若者を象徴するような、そんな青年の役。彼は単調な日常の中で、平和ボケしているまでは言いませんが、誰しもが大なり小なり起こりうる突発性要因のために徐々に孤独になっていくわけですよ。現代の日本は、非常に核家族化が進んでおる。昔であれば兄弟も多いし、親戚との付き合いなんかも密接であったわけです。だがしかし、そういった旧日本人の、地域のコミュニティもしっかりしていて、地域社会に密着した中で、さらに血縁縁者のつながりも濃いのはもはや昔のこと。元来の村社会体質からだんだん現代の都会中心の生活スタイルになって、少子化も進んで、実は子供兄弟も少ない。ちょっとしたきっかけで、すぐにひとりぼっちになりやすい。

現代を象徴するのは「都市」的な生活であり、その生活には日本人の持つ何かが欠けているのではないか。世間でよく言われている、「希薄な人間関係」の中で主人公がどう生きていくかが、実は映画のテーマだった。

鳥肌実 ですから、この「タナカヒロシのすべて」は、今日典型的な話として言われているこの日本の、そういう氷山の一角の話なんじゃないのかなと勝手に自己解釈してやったわけであります。監督からは、普段と違って淡々とやっていただきたいと。だからとにかく普通に、テンションをあげずに、押さえた役を作るように努めていたのです。だが、これがなかなかに難しい。私はテンションのバルブの開け閉めが起用にできるタイプでもないですし。もうローかトップしかないのが私ですから。

確かに演説で聴衆相手に圧倒的なパフォーマンスを見せる鳥肌独自のスタイルとタナカヒロシというキャラクターでは、まったく雰囲気が違う。鳥肌の「ロー&トップ」に加え、半クラッチとも言える微妙な演技が随所に見られる。

爆発しそうで最後まで爆発しないというタナカヒロシ。私自身には、生まれ持った必要以上な殺気がありますもので、監督がにじみ出る危険さを望んでいたならば、それなりのお手伝いはできたのかなと思います。現代人が抱える、日頃のフラストレーション、日常生活における自分の力ではどうにもならない流れ、そういうものに対するふつふつとした何かが、爆発しそうなんだけど、爆発しない。

タナカヒロシが現代人を象徴するキャラクターなのであれば、鳥肌の目には現代日本はどう映っているのか、そしてそれが映画の中でどう反映しているのか。それを尋ねると、鳥肌は社会正義の鉄槌に手をかけた。

今の日本の国というのは、やっぱりいかんともしがたい。まず国力が落ちてきておる。少子化からはじまって非常に不景気で、高度成長期から急成長を遂げてきた日本経済というものが、ついに1980年代をピークに90年代、そして2000年を境に下降線をくだっておる。その中で日本の都市部における市民生活というのは、核家族化だけではなくて、今ニートというのか、、若者が60何万人も仕事をせずにぶらりぶらりとしておる。そんな国はたぶん日本だけだ。国自体も借金を抱えて豊かではない。こういう大きな国の流れの中で国家というものに対して興味を持たず、韓国や中国の若者たちのように政治問題に鼻息も荒くなく、国家だけではなく家族、民族に対するいっさいの興味がない。何が言いたいかというと、人類史上特殊な社会現象がこの日本で起こっており、平和ぼけしておる状態が普通ととらえられておるのではないかということです。映画の話からは離れているかもしれませんが、今、こういう「平凡」を問いかける脚本で、さらに私のような人間が必要とされていることもひとつの社会現象であると思うのです。

鳥肌実「平凡」とは、波風がたたない安定した状態のことを言うが、父親の死をきっかけに、タナカヒロシは思いがけず波乱の人生を歩み始めることになる。鳥肌の言葉から、どんなに「平凡」でありふれた生活を送っていたとしても、常に変化は訪れるものだという、強いメッセージを感じた。

ひと昔前であれば、深作監督の「仁義なき戦い」をはじめ、任侠の世界などの鼻息の荒い映画が隆盛でしたね。そのころは、もちろん日本も元気がよかった。だから逆に、その当時こういう脚本で映画とりましょうと提案しても、時代にそぐわなかったはずです。でも、今は違う。私みたいな、いまいちよくわからない、役者でもないような男を使ってやりましょうという話になっていくこと自体が、今の日本の状態を言い換えているのではないですかね。私は私で時代の流れに乗っている。今後は戦争映画なんかにも出てみたいですね、軍服を大量に買い込んであるので、軍人俳優としてのですね、再スタートは切れないものかと。将官の役であればなおのこと私の出番でしょう。

(取材・文:新田哲嗣/撮影:田中純一)

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(C) 2004「タナカヒロシのすべて」製作委員会
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