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ありがとうございました。
Excite:今回のアルバム『joy』は約2年ぶりのリリースということで、制作期間的にはソロになってから
一番長くかかったのではないですか?

YUKI:去年はずっとレコーディングをしていた感じです。
でもそれは1枚目(『PRISMIC』)の時も2枚目(『commune』)の時も同じでした。

Excite:制作期間を改めて振り返ってみるといかがでしょう?

YUKI:これまで、1年を早く感じることってあまりなかったんですけど、去年はギュッと短く感じましたね。
シングルを出したり、ライブをやったり、すごく濃かったからだと思うんですけど。1年中フル稼働でした。
そこで作っていたものがやっと今表に出てきていて、すごく嬉しい。たぶん去年は辛抱の年だったんだと思います。

Excite:いつお会いしてもYUKIさんはパワフルな印象なんですけど、当然ずっと元気なわけでもないでしょうし、制作面では生みの
苦しみを味わうこともあると思います。それが今、1枚のアルバムに完成した心境はどんな感じなのでしょうか?

YUKI:楽曲に関しては生みの苦しみというのは本当にないですね。音楽を作る時に苦しむことは、今までも思い出せないくらいありません。というのも、やりたいことが自分の中で明確なので。楽曲作りもレコーディングもライブも楽しいからいつでもできるし、常にしていたい。これはミュージシャンの基本ですね。33歳になったんですけど、歌手としてますます基本的なところにきているみたいです。だから音楽に対してピュアに向きあえていますね。今回のアルバムにもそれが出ていると思います。

Excite:『joy』には『舞い上がれ』のヒップホップ調に始まり、他にもロック、ゴスペルの要素を取り入れたもの、少し懐かしい雰囲気
のもの、さまざまなテイストの曲が収録されていますよね。そこらへんを深読みすると、やっぱり長い制作期間の間に聴いた音楽からの
影響を受けているのかなとも思うんですが。

YUKI:このアルバムの全体像が見えたのは『舞い上がれ』を作った時で、その時は打ち込みの音がメインのダンスミュージックのみのアルバムを作ろうと思っていました。でも制作期間中に時間があいてしまったこともあって、突然「ロックンロールがやりたい!」とバンドを呼んでみたり、途中でいろいろなアイディアが出てきて、あんな曲やこんな曲をやりたいと思ってやってみたりと変わっていったんです。それが今思うと良かったですね。イメージがひとつではないところが、私らしいと思います。自分のやりたいものができたアルバムだったので、言葉は悪いですけど、あまり深くは考えていないんですよ。

Excite:『舞い上がれ』は2003年10月にできた曲でしたよね。その時点で浮かんだ全体のイメージ(=打ち込みのダンスミュージック)
と実際に完成したアルバムを比べてみると、そこに違いはあったりしますか? 『joy』のテーマは「強くて、軽やかで、踊れるアルバム」
だそうですが。

YUKI:それはずっと芯にあって、あまりブレませんでした。裏テーマが「しゃらくさい」で、理屈っぽいものはやりたくなかったんですよね。音楽はもっと自分の力になるものだと思うんです。詞も昔の私が聴いてきた80年代の、意味がそんなに深くないというか、「歌うための歌」に惹かれてました。哲学や教訓みたいなものは一切ない歌。歌は歌として独立していてほしいという気持ちが、最近は強くなりましたね。これまで私がずっとやってきたことはどちらかというと自分自身の考えが強く出ていると思います。
それを止めてみたかった。そして止めてみたことが、今回のアルバムの新しいところです。

Excite:たしかに今回のアルバム、肩ひじ張らないで聴けるんですよね。どこで聴いていてもスッと入ってきて、当たり前にそこにある
っていう感じ…。

YUKI:その感想はとても嬉しいですね。私にとって音楽は、まさにそういうものなんです。聴く時は寝そべっていてもいいし、外でもいいし、どこでもいい。歌うことなんてもっとどこでもできますし。音楽や歌というものは高尚なものではないと思うし、アートでも芸術でもないと思う。そういうものをやりたかったんです。それが伝わったと思うとすごく嬉しいです。ロックンロールって「悲しみなんて吹き飛ばせ」という音楽で、それこそが音楽の源だと私は思うんですよ。現実に悲しいことがあるのは当たり前で、悲しいことのない人なんているわけがないんだから。いつも笑っているような人なんて絶対にいない。だから、私はそれを踏まえて強いアルバムを作りたかった。そういうのも笑い飛ばせるような、ロックンロールアルバムが作りたかったんです。サウンド的には全部がロックンロールではないけど、これが私のロックンロールアルバム。なんか、「連れて行ってやる!」というか、「ついて来い!」というか。音楽にはそういう力があると私は信じています。このアルバムは私自身も連れて行ってもらえるアルバムだし、このアルバムを聴いたみんなを連れて行く自信があります。

Excite:その自信がYUKIさんの中で芽生えた瞬間というか、「これはいいアルバムになる」と確信した曲はありますか?

YUKI:『ハローグッバイ』ですね。突然今まで一緒にやってきたスタッフとお別れしなければいけなくなったりして、レコーディングが滞った時期があったんですよ。別れや出会いがあって、自分の中ですごく孤独を感じたんです。でも孤独っていうことを感じたのが自分にとっては良かったとも思います。それは誰もが感じる孤独と一緒で、私もそうなんだということを音楽に入れられるようになりました。そして、そういう私が作るからこそ、孤独も幸せも分かち合えるものを作れているなという。このアルバムは孤独と喜びが表裏一体な感じがしますね。

Excite:音作りという点では、どのような形で進めていったんですか?

YUKI:私、音を言葉で伝えるのはあまりうまくない方なんですけど、なんとか伝えようと頑張りました。細かいところまで実際に音を出してもらって、それを聴いてジャッジするような。わからない時は歌うとか。私は楽器もできないので、「クチュッて音」とか「紙がガチャガチャなる感じ」とか、そういう風に言って伝えていましたね。でもきちんと「今」を見て作っているはず。だから『commue』とは全然違う音になっていると思います。

Excite:本当に全然違いました。今回聴き比べてみたんですけど、全然違う。

YUKI:本当にそう。同じエンジニアでも南石(聡巳)さんの音と、甲斐(俊郎)くんや原(剛)さんの音はまったく違いますね。あと今回初めて一緒に仕事をしたディレクターの玉井(健二)くんは、これからのいい相棒になりそうです。

Excite:今回、玉井さん以外にも『Home Sweet Home』の田中ユウスケさんや『ハローグッバイ』の蔦谷好位置さんなど、新しい出会い
がたくさんあるアルバムでもありますね。

YUKI:そうなの! 本当に『ハローグッバイ』がすべてですね。やっぱりこの曲ができて自分でもすごく楽になった。なんて言うか、生きて行くことを思う存分楽しんでやろうって気持ちになったんですよ。この曲を書いて、自分で自分を救いましたね。それは孤独を受け止めたからかもしれません。孤独は誰もが持っているもので、私はそこを伝えたいんだと思います。『ハローグッバイ』を書いて、私は音楽に夢やファンタジーを入れたいと思ったんです。孤独を感じる自分だからこそ、音楽に夢のある世界に連れて行ってほしいと思ったんだと思いますね。自分の“想い”を詰めるのは『ハローグッバイ』で終わった。私はもっと、生き方哲学ではない、美しい言葉がメロディーに乗ってる「歌うための歌」が歌いたい。

Excite:それではここで1曲ずつおうかがいしていきたいと思います。まずは前々回のインタビューでもおうかがいした『舞い上がれ』。
これを1曲目に持ってきたというのは…

YUKI:もうこれしかなかったですね。

Excite:ですよね。

YUKI:この曲が2003年10月にできた時点で、私の心は決まっていたので。<まだリタイアなんてしないでしょう>ソングですね。

Excite:次は最新シングルの『JOY』ですね。

YUKI:『JOY』は、人には昔から第六感があったはずで、その第六感を意識的に使わないと寂しい気持ちになっていくという想いから書きました。「リトル・トリー」というネイティブ・インディアンの物語りの中で、リトル・トリーがおじいちゃんとニレの木を使ってお話をするシーンがあるんです。私はそこがすごく好きなんですね。それを読んで、人はきっと離れていてもきちんと話をすることができるはずだと思ったんです。この本は昔のお話だけど、今もできるはずだと思って『JOY』を作りました。私は私の歌を通して人と人をつなぐツール、つまり“呪文”になりたいんですね。YUKI=JOYというか。その気持ちがこの曲にはとても表れていると思います。

Excite:そのツールとしての役割を果たすためにも、2曲目という冒頭に入れたんですか?

YUKI:というより、『舞い上がれ』『JOY』『ハローグッバイ』はもう決まってました。この3曲はつながっていましたね。

Excite:それでは3曲目の『ハローグッバイ』。

YUKI:この曲を作っている時は辛かった時期だと思います。私は心の切り替えがかなり早い方だけれど、それでも後悔や、間違いを侵して自分を責めることも多々ある。周りが変わっていくという当時の状況も自分のせいだと思っていました。同じところに留まってはいられないとか、人はひとりだけどひとりでは生きられないということを、とても思っていた時ですね。<むだじゃないよ>って言ってほしい。それだけでどれだけ救われるか。みんなも私も全然変わらないということを書いた、私のキーポイントになる曲です。