これまでにリリースしたシングルを集めた『ALL SINGLS BEST』ですが、今回これをリリースすることになった経緯は?

話が出たのは、昨年です。シング ル『桜』のリリース(※2005年11月リリース)前後ぐらいでしょうか。やっぱりこの「桜」は僕らにとって 大切な曲なので、これまでなかなか「レコーディングしよう」とか「リリースしよう」とかってことになら なかったんですよね。ライヴでたくさん歌っているし、知っている人はもう知ってくれているという気持ちが あったからでもあるんですけど。それが昨年の8月ぐらいにレコーディングをしようかって話になって。作品として自分たちの中で納得できれ ば、シングルにしても良いんじゃないかって感じで録ったんです。そうして録り終わった時、2人とも「桜」が持っている原点的なイメージと今の自分たちがちゃんとミックスされていると思えた。

そうしてリリースを決めたあたりから、ぼんやりとベスト盤の話をするようになりましたね。

実は、その当初は“シングルズ・ベスト”ではなく、“ベスト・アルバム”を出すという話だったらしいですね。

そうなんです。最初のアルバム〜最新作から20〜30曲って言っていたんですけど、みんなで集まって曲決め会議をしても結局決まらなかったんですよ。それはなぜかと言ったら、それぞれの曲にそれぞれの想い入れがあって、「この曲はどうしても入れたい」っていうのがバラバラで。やっぱり、曲に優劣は付けられないんですよね。そこでシングルズ・ベストという話が出たんですけど、それと同時に、今コブクロを初めて知ってくれる人がこれだけ増えてきた中で、そういう人たちの一番最初のコミットになるアルバムになれば良いんじゃないかなって話にもなって。シングルを集めたアルバムを聴いてもらって、その中からどの年代が好きか……最新のオリジナル・アルバム『NAMELESS WORLD』が好きとか、逆にもっと遡って『Roadmade』が好きって人ならば、そっちを改めて聴いてもらえると良いし。その為にまずは、シングルズ・ベストが良いんじゃないかなと。次、第2弾があるのであれば、今度は全アルバムからとかファンのリクエスト方式とか、また違った形にすれば良いですしね。

やっぱり、ここ最近で明らかに聴いてくれている人が増えたという実感はありますか?

そうですね。まぁ、ライヴは欠かさず演っているので、その中で毎回動員が増えているってことは、お陰様でずっと感じることは出来 ていたんです。前回に比べて動員が何%増えたとか、会場が以前より大きくなったとか、大きくなったら今度は2日間演ろうとか、 そういう段階を経てきているんですね。ただ、CDとしてリリースしたものが、どれぐらいの人に届いているかというのは、実は僕らっ て手応えを感じづらいんです。「そうなんだぁ」みたいな(笑)。でも、すごく嬉しい。CDって、僕らの中では、最終的には“匂い” ぐらいまでのもので留まっているような気がして、逆にライヴは“食する味”ぐらいの近さがあるというか。実際に食べてみて、美味 しいかどうかを判断してくれるのがライヴ。その前の段階であるCDで、その“匂い”を嗅いでくれた人が次にどうするかっていうと、 食べたくなるかならないかってことですよね。 ライヴにはCDを聴いて足を運んでくれる人がすごく多いんですよ。それは、ライヴにし かないエネルギーを、CDにもちゃんと取り込めるようになってきたのかなっていう感じはします。

実は7月のExcite Music Festival’06で、コブクロのライヴを拝見させていただいたんです。生で観るのは初めてだったんですが、 ステージから押し寄せるエネルギーに驚かされました。なんなんだろう、これはって(笑)。

あはははっ。なんなんでしょうねぇ。

でも、基本的に僕らは歌が好きで、CDとか聴いていても歌について2人でよく話すんです。例えば「この楽器かっこいいね」と言 っているよりは、「この人の歌にはキレがあるな」とかを話していることの方が多い。そういうのを自分たちもすごく求めていて、僕も 新しい楽曲を書いた時には、それを1回もみくちゃにして“何が出るか”っていうのを2人で楽しむわけですけれども。ライヴを演る と、どんどんどんどん味とかが出てきて、例えばそのExcite Music Festival’06でも、ある瞬間に味みたいなのがドーッと出てきて。 それは僕も聴いていてすごく気持ち良いし、もう楽器を止めちゃいたくなる。歌だけで良いっていう。だから、そうやって気持ちよさが 伝わったと思うと、本当に嬉しいですね。

そして、今回一番興味深かったのが曲の収録順。『ALL SINGLS BEST』と言うからには、当然初期の作品から並べていくのかなと 思いがちなんですけど、今作の場合は最近のものから遡っていくという。ただ、リリース順というわけでもないようで、これにはどう いったこだわりが?

僕らがリリースしたシングルは、両A面も入れて全部で19曲あって、本来の世の中的な順番ならリリース順っていうのになると思う んですけど。僕らの場合だったら「YELL〜エール〜」が最初で一番最近が「君という名の翼」。でも今回の『ALL SINGLES BEST』 は、路上の頃から今までの僕らっていうのを網羅している一方、聴いてくれる人の中にはやっぱり近頃知ってくれた人っていうのもた くさんいると思うんです。だから、一番新しい作品から一番古い作品に遡るようにしていこうってことで、しかもリリース順じゃなくて作 曲をした順番に、逆に並べてみたんですよ。そしたら本当にリアルな僕らの歩みが。結局僕らは、最後「桜」に辿り着いて当たり 前なんですよね。

曲は新しい方から並んでいるんですけど、そうすると全ての今日が「桜」に向かっているという。一番新しいシングル(※『君という 名の翼』2006年7月リリース)の一つ前のリリース作品なので、「桜」が一番古い曲には見えていないと思うんですけど、実はそうなんだってこ とが面白いですよね。

今作はこれまでのことを振り返るきっかけにもなったんじゃないですか?

やっぱり、一つ前の作品がその一つ後の作品に繋が っているし、その前の作品はもう一つ前の作品から繋がっているって感じで、ちゃん と鎖のように、繋がって繋がって、影響し合いながら生まれた曲ばかりだなと思いましたね。曲には、 その時の熱みたいなものが込められているので。プロモーションの取材ではその曲について2人で一 生懸命話すんですけど、そういうのってまるで我が子を紹介するかのように、生まれた理由をはっき りと人前で話すわけじゃないですか。だから、その1曲ずつが僕たちの歴史になってきたんだなって思いましたね。

黒田さんはヴォーカリストとして変化に改めて気付いたりするのでは?

それはもう。「YELL〜エール〜」の頃から順番に聴いていって、「桜」とか聴いている段階になると「別人ちゃうか?」ってぐらい 変わっているところもあります。ただ、再録している曲もあるんですよ。「DOOR〜The knock again〜」と「轍 -Street stroke-」は オケから歌から全部新しく録り直していて。元の音源よりも自分達の意図するものが伝わるなと思ったものに関しては、録り直したんです。

で、実際に録り直したのは「DOOR 〜The knock again〜」と「轍 -Street stroke-」の2曲。

そうです。「YELL〜エール〜」とか「風」とかは、録り直せばもちろん良くなる部分もあるんですけど、元の音源を聴いているとや っぱり、すごく頑張っているのが出ているんですよね。だから、敢えて取り直しませんでした。

そこで今回の2曲を録り直した具体的な理由とは?

録り直してもメリットとデメリットの両方があるんですけど、メリットの方が多いと思ったので。特に「DOOR」の方はアレンジが少し変わっているのと、(再録することで)プラスαしたいなと思ったのと、それから歌。もう1回録ったらもっと良くなると思ったんです。「DOOR 〜The knock again〜」って、笹路(正徳)さんが最後にプロデュースしてくれた曲でもあるんですけど、この曲はインディーズでも1回録っていて、メジャーで1回録っていて、今回で録るのは3回目で。もうこれで最後になるんじゃないかなぁと思いつつ(笑)。

「DOOR 〜The knock again〜」と「轍 -Street stroke-」は、どんどんどんどん変化してくってことで、レコーディングしてもレコーディ ングしても、またその後に生まれ変わっていくというか。そういう曲だと思うんです。だから、ライヴでも欠かさず歌う曲でもあります。

今、笹路さんのお名前が出ましたがデビューからずっと笹路さんにプロデュースをお願いしていたコブクロが、セルフプロデュースに 移行したのは2年前のこと。これはかなり大きな転換期ですよね。

そうですね。学生が社会人になる時ぐらいの感じはありましたね。いよいよ自分達を試す時が来たかなという感じで。それまではやっ ぱり、教えてくれる人がいるし、意見もくれるし。僕らはその中で出せることを全力でやってきたんですけど、そこで教えられたことの 質の高さを、離れてから痛感しますね。セルフプロデュースになってからの2年間で分かったようなことが、とっくの昔に笹路さんが 言ってくれていた。「コレは笹路さんがデビュー当時から言っていたな」みたいなことを、ものすごく感じるんですよね。もちろんセル フになった時、笹路さんのやり方の全てを模倣したわけではないですよ。こうなったら僕らが考えていることだけでやってみようと思う んですけど、笹路さんがやってきたことには無駄のない、一つの方程式っていうのがあるんです。逆にそれさえ押さえておけば自由 にやれるんだなっていう。

聴き比べた印象では、セルフプロデュースになってからの方が、自由度が増しているように感じられました。

あ〜なるほど。でも、笹路さんとの3年間があってこそのセルフプロデュースですからね。デビュー当時からセルフプロデュースでや っていたら、どうなってたんだろうっていう思いもありますよ。あの3年間で基本的なことから細かいとこまで、全てを手取り足取り教 えていただいたんですから。