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一青 窈
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Excite:シンガー・ソングライターという呼び方になぞらえるなら、一青さんは“シンガー・ソングポエト”という存在でしょうかね。メロディを他の人に託して詩を自身で書き、自身で歌うというスタンスですから。それはそれで理想のメロディを手に入れるために苦労があるのでしょうね。
一青 窈:でも、デビュー前に自分でメロディを作っていた時もあるんです。何故か、ついアヴァンギャルドなものになるというか、起承転結がなくて変わり続けるメロディになってしまうんですよね(笑)。ちゃんとした構成がないと、聴いている人も安心出来ないでしょう。私のメロディは飛び過ぎていて人様にお聴かせ出来ないですね(笑)。
Excite:それから、シングル曲「受け入れて」のミュージックビデオには、大変胸を打たれました。全体が絵本のように可愛らしく、そうした気遣いで逆に広がりが生まれていますね。はっきりとした意見のあるミュージックビデオ作品は、日本では珍しい。良いですね。偏見とか差別についての異議を唱えるというのは、曲作りの根本からあったのですか?
一青 窈:元々、友達が性同一性障害で悩んでいて、ある日私にカミングアウトをしてくれたという出来事がありまして。話してくれて嬉しかった、という気持ちが最初にありました。「そもそも、何故今だったのか?」ということも含めて。私が小学生や中学生の時に打ち明けられていたら、彼女の痛みをどこまで受け入れられただろうかと考えると、恐らくあまり分からなかったでしょう。だから、時期的に今で良かったのかもしれない。そういえば、私も壁を作っていたことがあるなぁ…。人には、こと性別だけではなくて、習慣や文化にも意外な違いがあって、その違いを個性ではなく、たまたま差別や偏見と捉えてしまうから問題が起こるわけで。そう気付いた時に、「この曲は多くの人に当てはまるかもしれないなぁ」と思えてきたんですね。
一青 窈
Excite:そうした実話が伴っていたんですね。「受け入れて」についてのご自身のコメントが資料にあります。「でこぼこなものが好きで、私はいつか全部を受け入れられる器になりたい」と記されていますね。全部を受け入れる、という大きな想いを目指しますか?
一青 窈
一青 窈:そうですね。割と、こう自分が気付かない場所で差別とか偏見を持たれてしまう気がします。でも「この人苦手だな」と思った瞬間に自分が苦手だと思ったことを考えないといけない。でもその人は、苦手どころか、むしろ好意を持っていた、ということが往々にしてあって。それが凄くチャンスを逃がしているなぁ、と思った時に、「やっぱり世界は自分次第なんだ」と感じたんですね。楽しくなるのも悲しくなるのも…。
Excite:嫌いなもの、憎むべきものは表現のテーマにしたくない方でしょうか。
一青 窈:それは良く質問されるんですよ。「嫌いな人はいないんですか?」なんて。嫌いな人って、結局、嫌だと思っているポイントが自分の中にあるんですね。私は批判をまず聞こうとは務めます。そこに何かヒントがあるだろうとは考えますね。嫌いになっても何も返ってこないし。
Excite:ネガティブな感情からは作品を作ってはいない?
一青 窈:ネガティブなものは書くことで一回吐き出します。凄く嫌な想いは、泣きながら書いたりもしますよ。それを後になって見てから、もう少し冷静になって書き直します。ただ、痛みとか悪意を呈示されても、私だったら気持ち良くないので。良いパワーが生まれないし。
Excite:「つないで手」という曲の詞の一節が僕の心に最も響きました。<もしも私が先に死んであなたを悲しませるなら/どんなに傷ついても今を生きるため負けない>というフレーズです。凄いなあ。誰に対してならそう思えるのか、きっとリスナーはそれぞれに想像しているでしょうね。一青さんは、幼い頃にお父さんが亡くなって悲しんでいる母親の背中を見て、そう感じたそうですね。
一青 窈:はい。でも、それが段々と分かってきたのは大人になってからですね。性同一性障害に悩む友人が自殺未遂を繰り返していたことがあって、その度に私は怒りを憶えていたんです。その怒りって何だろう…つまり私の気持ちが全く見えていないということですよね。あなたは辛くて死にたいと思っている。けれども死んだら悲しいと思う私のことが見えていない。見えていないのにSOSを出すのはズルいじゃないかと思う。でも、そこで「あなたが必要だ」と言われても、やっぱり死にたいと望むなら仕方がない。ただしそこで死んじゃったら“本当に恨むぞ”という気持ちかな(笑)。だって、関わったからには思い出に変わって行くじゃないですか。だったら、関わったことでの幸せを分かち合う権利みたいなものは私にもあるでしょう?と思いますよね。
Excite:幸せを分かち合う権利。う〜ん、今の話の中にも愛情と独特の理がありますよね。一青さんの言葉の中に「言霊がある」という定評が、今とても分かった気がします。「歌のテーマは生と死である」と、かつて語っていますね。生と死については、日常から考えているものですか?
一青 窈:普通に過ごしていたら忘れてしまう感覚なんでしょうね。だから自分に気付かせる為に、色々な国へ旅に行ったりするのかもしれません。とにかく生きている人達に触れる。それをしないと命の有り難みを忘れてしまう、愚かな自分がいるので。
一青 窈
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