エキサイト 今作『manu a manu』は持田さんにとってソロ3作目のアルバム。前回のインタビューでは、今回で一つ持田香織というアーティストの世界観を出したいとおっしゃっていましたが、こうして実際に完成した今、その手応えはありますか?
持田香織
そうですね…1枚目の『moka』の時は、Every Little Thingからちょっと外に出て、自分が敬愛するミュージシャンの方達と作品を作っていくっていうのがテーマで。私も手探りな部分がありましたし、色々と落ち着きがない感じを楽しんでたというか(笑)。色んなところに寄り添いながらも、自分にはどんな可能性があるんだろうっていうのを楽しみながらやってた一枚だったんですね。その結果、優しくて手触りのいい、カーゼみたいな質感の音の集まりというか、派手じゃないんだけど一枚としてまとまりのある作品が出来たと思ってるんです。
エキサイト 2枚目『NIU』の時は?
持田香織
『NIU』では、そこからもうちょっと踏み込んだところに。“音楽”という部分と向き合っていける自分でありたいっていうのがテーマでした。普段ご一緒する機会がない方達…特に半野(喜弘)さんとは、コードの付け方一つ取っても、自分がELTでやってた時のようにはいかなかったり。レコーディングする時も、1週間の強化合宿、みたいな(笑)。それまで自分は何を歌ってきたんだろうって思い知らされるくらい、半野さんとのレコーディングは本当に厳しかった。だから私、ボイトレの回数を死ぬ程増やしましたもん(笑)。それくらい、色々見直さなきゃいけないなって思ったんです。
エキサイト 打ちのめされたと言ってもいいくらい?
持田香織
もう本当に。これじゃいけないって思ったし、でも半野さんみたいな方とレコーディングできて本当に良かったと思いました。厳しくもありつつ、でもすごく愛情を持ってやってくださる方なので。やっぱり、そうやって見直すことも必要だったし、その中で新しい自分を知るっていうのが2枚目でした。
エキサイト それを経ての3枚目が、この『manu a manu』。
持田香織
今回は、以前も一緒にやってくれた人達がほとんどだったので、やっぱりコミュニケーションが取りやすくて。レコーディングの合間にもご飯行ったりだとか、普通に会う機会もありましたし。なんかその、お願いしましたからスタジオに集まってっていう感じじゃなく、事前に「こういうのがいいと思うんだけど」って、そういうやりとりができる人達になってたんです。
エキサイト それこそ重ねてきた月日の賜物ですよね。
持田香織
はい。なので、そうやって繋がったところから、そのまた一歩先はどういう感じになるんだろうってところに踏み込んだのが、今回の3枚目なんです。
エキサイト より密なコミュニケーションを取りながらの制作だったんですね。
持田香織
前の2作よりはだいぶ取れていたと思います。『NIU』までは自分のことで精一杯だったんですよね。好きな音楽家の方達にお願いしたサウンドに、自分がボーカルという立場でどういうふうに混ざり合っていくかということだったり。でも今回は、例えば半野さんにしても、2作目よりもうちょっとこちらに近付いて来てくれたような感覚もありました。近付いて来てくれつつ引き出してもくれる、みたいな。それって多分、話して話して話してっていうところから生まれてくるものなんだろうなって。
エキサイト 今回“はじめまして”の方は?
持田香織
ミト(クラムボン)さんですね。あ、中島(ノブユキ)さんもアルバムでは初めてですけど。ミトさんは「めぐみ」で初めてお会いしました。ただ、同じ初めてでも、1枚目に皆さんと初めてやった時とは違う初めてっていうか。私自身、自信を持ってやりとりが出来たところもありますし、ミトさんもすごく音楽に対してストイックな素敵な方で。ボーカルに対しても、録り方をはじめちゃんと導いてくれる。先生みたいというか(笑)、やっぱり全体を見てくれる方でした。バンドも、ドラムの柏倉(隆史)さん(toe)やピアノの末光(篤)さんをミトさんがチョイスしてくださって。そういう方達と出会えたのも大きかったですね。
エキサイト 今回、ほぼ全曲を持田さんが作詞作曲したというのも今作のキーになってると思うんですが、それは意図して選んだことだったんですか?
持田香織
もっと時間があれば、この人に曲を書いてもらいたいってことをお願いしながら、ゆっくり作っていくやり方もやってみたいんですけど…。今回、準備はしていながらも、実際レコーディングに取り組んだのってELTのORDINARYツアーが終わってからだったので。そこから曲を書いてもらってってなると、時間的にどうかなって思っちゃったりして。
エキサイト 全体的なことを考えて。
持田香織
そうですね。でも、音作りは好きな音でお願いしたくて。ただ、皆さんがそれを引き受けてくれるのかくれないのかっていうのもわからなかったので。時間もない中だったので、申し訳ないなって思いながらでもあったんですけど。
エキサイト それにしても、すでにお名前が挙がったミトさんや半野さん、中島さんの他にも、おおはた雄一さんや大橋トリオさん、大谷友介さんなど音楽ファンが喜ぶ豪華なミュージシャンが集結してますよね。
持田香織
本当そうなんです~。
エキサイト この人選は持田さんの中で制作段階からイメージされていたものなんですか?
持田香織
メロディに対して、この曲だったらこの人にやってもらいたいかもっていうのはありました。例えば「雨は徒然に」だったら、中島さんにピアノを弾いてもらいたいな、そして願わくは北村(聡)さんにバンドネオンを…みたいな感じでお願いして。なんか私、歌謡曲時代の人たちがフレンチポップを意識して作ったような雰囲気がすごく好きで。