ブログのアップをひと休みし、日々湧き出る想いを音と歌詞にたっぷり注入。そうして心魂を傾けて作ったという遊助のニュー・アルバム『あの・・出会っちゃってるんですケド。』は、出会いをテーマにした一枚だ。アルバムは、遊助機長が乗り込む爽快なナンバー「翼」でフライト。ブラジル発セルタネージョやジャマイカ発レゲエ、幻想的な和風の調べや軽やかなディスコ調サウンド、牧歌的なカントリー調ポップスから、さらには野球の応援歌なども巡りながら、さまざまな出会いを描いていく。遊turingゲストにはSHOCK EYE(湘南乃風)、GILLE、TEEが参加と話題性もばっちり。そんなアルバム制作の舞台裏を遊助がたっぷり語ってくれた。
エキサイト 今回のアルバム制作のペースは、過去3作と比べてどうでした?
遊助
早かったですね、体感速度は。一番大きかったのはブログを2ヶ月ほどお休みしたこと。ブログがいけないっていうわけじゃないんだけど、すごいくだらない話題を書くにしても1~2時間使うから。あと、ブログに言霊を乗せていくと曲に乗っていかないんですよね。「あ、これはブログで書いたからやめよう」とか。
エキサイト ブログで一回想いを吐き出しちゃうから。
遊助
そうですね。アウトプットがちょっと脱線しちゃうというか。だから、その時間とエネルギーをアルバム制作に費やしたら全然違うんだろうなと思って。実際そうしてみたら、アルバムの方の言葉にグッと魂が乗ってきて。
エキサイト 今回はどんなアルバムを目指したんですか? 
遊助
出会いをテーマにしていこうと思ったんだけど、“出会いだからこうあるべきだ”っていうたいそうなことは思ってなくて。自分の親とか、一目惚れとか、身近な出会いと正面から向き合って、それに気づいてもらえるにはどんなエッジの効いた言葉があるかな?って考えながら作業していましたね。
エキサイト 出会いというキーワードは、いつ頃から考えていたんですか?
遊助
デビューした時から。
エキサイト え、そんなに前から?
遊助
最初が“感謝”、次に“夢”“愛”“出会い”って決めていたんです。20代の時から決めていました。
エキサイト それが1セットだとすると、今回のアルバムでひと区切りみたいなところがあるんですか?
遊助
いや、この先も“感謝”“夢”“愛”をループしていくんだと思うんですよ。今回は“出会い”だけど、出会いの中に感謝も含めていこう、みたいな。で、次は何かまた違うテーマの中に夢を含めていこうと。だから、4年後は感謝と出会いと、そこにもう一個何かが乗っかってテーマにしていると思う。
エキサイト そういう風にちょっとずつテーマが肉付けされて雪だるま式に大きくなっていく。
遊助
はい。そういう風にやっていこうと。だから、今回は初心に返ったといえば返ったし、もうひとまわりデカくもなっているんですよ。
エキサイト サウンド面はどんなことを意識していましたか?
遊助
少しミディアムを増やそうと思ったんだけど、寂しくなりすぎたら嫌だなと思って、あとから「怪盗MAGNUM 遊turing SHOCK EYE(from湘南乃風)」とか「シンデレラ」とか「Ragga Ragga Birthday」とかを作っていって。俺っぽくないというか、俺らしさがないな、みたいな。それも俺なんだけど、もうちょっとポップなものにしておこうと思って、アップテンポを増やしたんですよ。
エキサイト テーマがテーマだけに、じっくり歌いたい・伝えたいっていう心理が働いていたのかもしれないですね。
遊助
そうなのかもしれない。どうしても「わがまま 遊turing TEE」みたいな伝えていく系の曲になっちゃって。“んー、もう、そういうのは作ったからいい!”みたいな(笑)。それは作りながらすごく思ってました。
エキサイト アルバム制作でキーになった曲はどれですか?
遊助
「処方箋」。どうしてかわかんないけど、これ、歌ってると泣きそうになるんですよね。うわーっとなる。
エキサイト もともと、どんなきっかけで書いた曲なんですか?
遊助
風邪ひいたの(笑)。で、病院に行って先生からの処方箋を見ていて、「これで曲、作れるじゃん」みたいな。それで朦朧としたまま書いて。
エキサイト 貪欲ですね(笑)。
遊助
いろんなことを無駄にしたくないから。風邪ひいたのもラッキーにしたくて(笑)。で、朦朧としながら“病院の先生は薬くれたり、手術してくれたり、リハビリを教えてくれるけど、俺は何ができるんだろうな?”って考えたんですよね。その時に、音楽って心の栄養剤とか薬みたいになる、人の心を潤すなと思って。俺は何小節という短い時間の中で音と一緒に言葉を伝えていくことしかできないけど、それでも救われている人がいるんだなって。じゃあ、ちょっと俺も先生になってみようって感じで書き始めました。
エキサイト なるほど。
遊助
で、病って何があるかな?って考えて。糖尿病とか、そういうリアルな病名じゃなくてね。
エキサイト 恋煩いとか、そっちの方。
遊助
そうです。で、恋の病と五月病とあがり症と出不精だなって。
エキサイト 出不精の「精」は「症」じゃないですが(笑)。
遊助
最初はちょっと笑えるような感じで始まって、Bメロで解決策を言って、と考えた時にその4つが出てきて。どんどんどんどん、“あ…”“あ?”“あ!”って思わせていくような曲が作りたいなと思ったんですよね。後半に行けば行くほど、笑いが涙に変わっていくような先生の言葉が欲しいなと思って。
エキサイト 言わばこれは、リスナーとの出会いにフォーカスした曲ですよね。
遊助
はい。直接リスナーと会ってなくても、音楽が出会ってくれるというか。その時に自分の音楽はこういうものでありたいと思ってたんだと、曲が出来上がった時に気づかされた。結局、俺はこれが言いたいんだって。自分の音楽を聴いてくれる人に対して、こういう自分でいたいんだなって思ったんですよね。
エキサイト 「水無月」は、音も歌詞も壮大な世界観を持った曲ですね。
遊助
毎回、歌詞を作る時は目をつぶってGoogle Earthみたいなイメージを浮かべるんです。一回自分がグーンと上にいって、誰の何にスポットを当てようか?みたいな。で、“えっと、えーと…あのおじさん!”ってなるとびゅーんとズームインしていって、このおじさんが恋愛したらどうなるんだろう?みたいに考えて物語を作っていく。この曲はグーンと自分が上がった時に地球と月が見えて(笑)。
エキサイト それはまた随分上昇しましたね。大気圏を越えちゃった(笑)。
遊助
そう(笑)。じゃあ、もうでっかい世界観の曲を作っちゃおうって。
エキサイト 歌詞に出てくる<卯月の赤子>とは?
遊助
俺は日本語が好きだし、トラックの雰囲気からこの曲は和の感じにしようと思って。ご先祖様が引き継いできた言葉たちの中に自分たちの今の音楽があるし、昔の綺麗な言葉ってなんだろう?って考えていったんですよね。その時に俺ももともとは赤ん坊だったんだよなぁと思って自分の生まれ月を調べて。
エキサイト でも、タイトルは水無月=6月となってますよね。この水無月というワードは何を表しているんですか?
遊助
何かここから見えるかなー?って想像を膨らませていった時に、雨が泣いてるように見えたんですよね。たぶん、この歌詞を書く前にいじめのニュースで見ていたんだと思う。言葉って文字に起こすとものすごい武器になるでしょ。「お前、嫌いだよ」って言葉で言われるより、「お前、嫌いだよ」って机に書かれてる方がショック。文字だと表情が見えないから、自分の中にある一番最低な場面を思い浮かべちゃうんですよね。それをどうやって伝えたらいいかと思った時に単純に「言葉で傷つけないで」って言おうと。それを壮大な世界観で描いたらどうなるかな?って考えて、子供とかお母さんが泣いている姿を6月の雨と表現するといいんじゃないかって。これを聴いて、いじめっ子とか権力のあるヤツが“人を傷つけるのはやめよう”って思ってくれたら嬉しい。その本当にちょっとしたヒントになってくれればいいなって思っています。