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INTERVIEW 北川悠仁
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ありがとうございました。
 
Excite: まずは、ニュー・アルバム『リボン』が完成するまでのことをお聞きしたいんですが。昨年の6月にベスト・アルバム『Going』『Home』をリリースして、7月に日産スタジアムでライヴをやって、そこで一つ“区切り”が出来たという感覚は、ご自身の中であったんですか?
北川: そうですね。そもそもベスト・アルバムを出したのは、2004年に「栄光の架橋」という曲が、「思っていた以上に世の中の人に伝わったな」っていう手応えが自分達の中にあったからなんですよね。そこで改めて、名刺を作り直すというか、「ゆずはこうです」っていうのを一回やりたかったんです。だから、日産スタジアムまでを含めて、自分達にとってすごく大きな「点」になる、折り返し地点っていう意識はありましたね。4月ぐらいから肉体も含めて自分の意識を全て調整して、そこに持って行ったんで。
Excite: 体重を落とすことも含めて?
北川: そうそう(笑)、デカい会場だから体も鍛えようと。僕自身、歌を歌って演奏するっていうことプラス、お客さんを巻きこんで行くのが自分の大切な役目の一環だと思ってるんで。そのために自分で必要なものを、精神的にも肉体的にも用意して挑みたいなと。だから、日産スタジアムが終わった時は気持ち的に120%やり切った感じでしたね。
Excite: では、いざ新しいアルバムを作ろうという時、これまでの作品作りとはまた違うモードに入ったと?
北川: そうですね。でも、日産スタジアムが終わって「何やろうかな?」って思った時に、道がなかった。「あれ、どこに行けば良いんだろう?」っていうか…進むべき道が最初見えなかったんですね。それで、まずは片っ端から――たとえば目の前にあるこのコーヒーカップでも良いんですけど、「全部を歌にしちまえ!」ぐらいの感じで曲を作り始めて。多分、ここ3年ぐらいの作業っていうのは、ある程度対象になる相手とか、聴いてもらえる層を漠然と意識しながら、そこに向けてテーマ性を絞りこんで行くことだったと思うんです。そういうことを一回、大きなプロジェクトも含めてやり終えたんですね。で、新しく始めたのは、ホントに目の前のことからまず歌にして行くっていう初期衝動的な作業だったという。
Excite: なるほど。確かに『リボン』に収録されている楽曲の歌詞を読むと、日常的な描写が増えている印象です。
北川: 前作のアルバム『1〜ONE〜』(2004.09.15リリース)で、テーマ性を持って曲を作るというやり方が一つ完了したんですね。そこで改めて、「30代手前の(笑)、ひとりの人間、ひとりの男として曲を書きたいなぁ」って思ったんですよ。
Excite: アルバムの中身についてもじっくり聴きたいんですけど、まず1曲目の「リアル」は、アルバム全体における宣言、マニフェストっていうような曲ですよね。「リアルな曲を歌うんだ」っていう。
北川: まず「宣誓!」みたいな。
Excite: サウンドも打ち込み主体で、この曲を最初に持ってきたのは、かなり思い切ったことだなって感じましたけど。
北川: 4つ打ちだし、色々チャレンジしている要素もある曲なんで、後から「なんで最後の曲じゃないんですか?」とか「こういう攻めてる曲は、逆に真ん中で馴染ませた方が良いんじゃないですか?」という声もあったんですけど、僕自身は全然それを感じてなくて。ごく自然に「これが1曲目だろ」と。というのも、僕の中ではテクノっぽい「リアル」も、岩沢くんが作った弾き語りの「一っ端」も、「どちらもゆずの曲だよな」って単純に思えたんですよね。だから「リアル」が1曲目っていうのは、もう決まってました。
Excite: ゆずの曲は、もうサウンド・スタイルに縛られるものじゃないと。
北川: そうですね。さっき“折り返し”って言いましたけど、「9年間やってきた作業っていうのは何かな?」って考えたら、自分自身の地盤とか軸を作る作業だったんじゃないかと思っていて。それは音楽的にもそうだし、人間的にもそうだし(笑)。「やっとスタートラインに立てたんじゃないか」くらいに僕は思ってて。細かい変化とか色んな要素はあるにしても、その軸とか地盤みたいなものが、今はブレない自信があるんです。だから、別にゆずのイメージを壊してやろうとかいうのではなく、ごく自然に「この曲にはこういうアレンジが良いんじゃないかな」とか「この曲にはこういう方向性が良いんじゃないかな」と考えられるようにはなりましたね。どんなサウンドをやっても、僕的にはあんまり恐くないって言うか。
Excite: 「リアル」の中ですごく印象的なフレーズは、≪カッコ悪い僕等の唄を カッコつけて唄い続けんだ≫というもので。そうした意識があるからこそ、「もうすぐ30才」のような赤裸々な歌も生まれたのかな、と。
北川: ゆずをやり始めた頃に、「ダサさの美学」があったんですよ。「ダサいけど、すごく良いよな〜っていうものを追求して行こうね」って話を岩沢君と良くしてて。で、僕の中で今も変わらない考え方として、「とはいえ」っていう目線があって。「とはいえ、ゆずだし」とか、「とはいえ、路上だし」みたいなね(笑)。ゆずって順調に来ているけど、「とはいえ」ジャージから始めたもんだし(笑)、路上でお金ないとこからやってるわけだし、「そんな別にカッコ良くもないよ」っていう。でも、僕らはそんな音楽がすごく好きなんですよね。好きっていう気持ちは強くある。だから「カッコ悪いかもしんないけど好きだ」とか、「人に色々言われるけど、これを俺は良いと思う」っていう気持ちがすごく大切かなと思ってて。それを言葉にしたかったんですね。
Excite: それは9年間やってきて、もうすぐ29才になろうとしている今だから言える部分もあるんですか?
北川: ありますね。たとえば経験がなかったり、いろんなことにまだ自信が持てない時期っていうのは、不安な気持ちとか、自分の弱くて情けない部分を隠すために、あるひとつの状況…例えば“純粋性”だったり、“相手に対する怒り”だったりを、ピックアップして前面に出すことで自分を防御しようとしてた気がするんですよ。アルバムの度にそのポイントを変えて出してきたんだけど、今思うのは、強いところも弱いところも、激しいところも冷めてるところも、全部ひっくるめて人間だろうと。で、そんな人間に美しさを見出したい。光と陰、陰と陽があるけど、そういうのをひっくるめて人間って美しいし、可愛いなって思う。逆に「人間って汚いなぁ」とも思うけど、それも人間の一つの面だと思えるようになって来たんですね。